ゲーム理論②「タクトを持つのは誰だ」

ゲーム理論は、20世紀を代表する数学者のJohn von Neumann氏と経済学者のOskar Morgenstern氏が1944年に発表した経済学の理論です。一般的に「ゲーム」は多人数がルールを守って、それぞれの目的を達成する競技です。勝ち負けは自分の行動だけでなく相手の行動も関係します。自分の行動が他者に影響を与えて、他者の行動が自分の行動に影響を与えている。このような特徴が社会や経済と共通するという理論です。

 

ゲーム理論入門 (日経文庫―経済学入門シリーズ)

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ゲーム理論で勝つ経営 競争と協調のコーペティション戦略 日経ビジネス人文庫

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ゲームの主導権をもつのは誰だ

ゲームの中で誰が力を持っているかを知ろう。そのために「付加価値」について考える。付加価値というのは、

自分が参加することにより、パイが大きくなった場合の「増加」部分のこと

なので、自分がゲームに参加する場合に、

×「自分が受け入れることのできる利益の最低水準」ではなく、

〇「自分をゲームに参入させるために喜んで支払うであろう額」を考えるのです。

 

例を見てみましょう。

無名の映画スターがあるヒット作をきっかけにスターとなった場合、次回の出演作には大きな付加価値付の出演料がついてくることになる。また、ウォルト・ディズニーキャラクターに付加価値をもたせることで、大きな収益としています。

こんなのもある。1990年のアメリカのプリンター市場において、ドット式のシェア№1のエプソンは利益率が高い「レーザー式」に参入した。すると、「レーザー式」シェア№1のHP社は自社の「レーザー式」の価格引下げを行う。そのため、価格競争が激化。さらにHP社は「インクジェット式」も値下げ。すると、顧客がドット式インクジェット式に流れ、エプソンドット式は大きく落ち込み、主要ビジネスを失うこととなった。

 

ゲーム理論において、価格に主眼を置くことは戦略的に間違いのもとです。例えば、ある営業マンが契約数を追求するあまり、利益を損なうほどに価格の引下げを行った。周囲は「自分の目標のために、不要な価格競争をつくりだした」と考え「身勝手な行動だ!」と彼を非難する。しかし、彼にはしっかりとした考えがあった。彼は粗利が低下しても工場をフル稼働させることが会社にとって重要だということを知っていたのだ。

誰かと議論しようとするとき、三分の一は自分が何を言うべきかを考え、三分の二は相手が何を言おうとしているかを考える。  

 アブラハム・リンカーン

次回に続く