史実に近い三国志を読む

三国志という中国史に一部に、これほど注目が集まるの不思議な感じがします。実は、そうなったのはそれなりの理由があるのだと思うのであります。それは、三国志そのものではなく、三国志という物語が作り出した脚本とキャラクターのマジック。

一般に知られているのは『三国志演義』です。これはあくまでも娯楽小説なので、事実に脚色をしてドラマチックに仕立てたものです。今回は三国志人気の理由を探るべく、史実にちょこっと近いと言われている『秘本三国志』という新しい切り口の三国志本を読んでみた👇

 

秘本三国志〈1〉 (中公文庫)

秘本三国志〈1〉 (中公文庫)

 

 

まずは『正史三国志』の歴史的背景

 魏呉蜀の三国時代を統一した西晋の時代にまとめられた記録書。そのため勝者側の視点で編纂されているので、魏を中心とした内容になっています。それでも、三国時代の記録書ですから、呉、蜀についても2割程度の内容が記録されています。

記録書なので、誰が何をしたということが淡々と語られていくもので、内容も他歴史書と照らし合わせても、相違がないことから歴史的に正しい内容であるとされています。

魏志倭人伝はこの書の中の魏について書かれた章のもの

 

三国志演義』誕生の歴史的背景

西晋時代後の南北朝時代南朝宋が、民話や地方に残る記録書を物語としてまとめたもの。ただし、民話は蜀について述べられたもが多いため、蜀を中心とした構成となった。

その後、何と1200年以上に渡って改編され、今の三国志演義は、1700年前後のものといわれているそうです。そのため、内容の3割はドラマチックな演出としてのフィクションであると言われています。

 

『秘本三国志』は

正史に近く、魏を中心とした構成です。『秘本』としての要素は、当時の宗教にスポットをあてている点。主に太平道五斗米道という人心を統制する新興宗教です。三国志演義に慣れてしまうと、著者の勝手な創作のように感じてしまうが、西洋や日本でも争いの背景に宗教があったことを考えると、実はこれが事実ではないかとも思ってしまう。事実、漢を滅ぼすきっかけてとなった黄巾の乱太平道という宗教的なまとまりでしたから。

また、三国志の英雄『劉備』の本格的な登場が、物語が3割ほど進んだところからで、人物像も「目的のためなら何でもする知略者」として描かれている。これも歴史上の英雄とされる人物の多くが「志高く、しかしそのためなら手段は択ばず」というところからも史実に近いのではないかと思うが、描かれ方がちょっと酷い。本当にこんな悪童であったならば、人心を引き付け、多くの英雄から援助されることはなかったはずですし。

正史や演義とは違った視点で描かれたストーリーは新鮮!!

 

 

人物の能力をみて、我が振りを直す

三国志には多くの登場人物がいます。そして、歴史書なだけに、登場するからには何かをするわけですが、その行動からその人物の能力が見てとれます。部外者から見れば、無能だということは簡単ですが、こうした時代には一つの判断もなかなか難しかったんではないかと思うのであります。

しかし、こうした無能なリーダーの行動やそれを止めるべく進言する知恵者の考えは、現代社会でも参考になるのであります。だって、この時代の戦略基準は「相手がどう考えるか」だから。こうした考え方の姿勢は人間関係や経営戦略にも通じるものがあるのではないかと思うのであります。

また、三国志は立身出世物語でもあります。魏の曹操も呉の孫堅も蜀の劉備もスタートは日本でいうと県や市の職員レベル。そこから一国を築くまでの志の高さと行動力は、日本の戦国時代と同じく、男のロマンを感じるのであります。