ゲーム理論④付加価値を高めるには
水ほど有用な物はない。しかし、水で何かを買うことはほぼ不可能だ。それと交換に何かを得ることはできない。逆に、ダイヤモンドは実生活には何の役にも立たない。しかし、それと交換にとても多くの財を得ることができる。
出典「1776年アダムスミス 諸国民の富」
ゲーム理論で勝つ経営 競争と協調のコーペティション戦略 日経ビジネス人文庫
- 作者: B・J・ネイルバフ,A・M・ブランデンバーガー,嶋津祐一
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞社
- 発売日: 2003/12/02
- メディア: 文庫
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任天堂のビデオゲームにおける成功の秘訣は、
- 比較的安価な専用ハード
- 質の良いソフト群
だ。しかし、ビデオゲーム機としての成功だけでなく、結果的に付加価値をつけることに成功したことによって、その効果を倍増させている。
そもそも、ビデオゲームは任天堂がファミリーコンピュータの販売を開始いた10年前に、アメリカの『アタリ社』が販売を開始している。しかし、質の悪いソフトが市場を荒らし、一時的な流行として衰退した。
それを知ってか知らずか、任天堂のソフト管理は徹底していた。
- ハードに保護チップ
- ライセンス制。しかも1ライセンスにつき5本までの開発
- 売り上げ低下したソフトを市場から回収
- ソフトのカートリッジ生産数を管理
※ソフト用カートリッジを市場が必要とする数の25%しか販売しなかった
良質なソフトは、ハードの販売を促進させ、ハードの製造コストを下げることができた。また、販売数の増加は、多くのソフトウエア開発者を引き寄せ、さらに多くの良質ソフトを生み出す。そんな感じでソフトの販売数を制限したために、ソフトは慢性的な不足状態だった。これが、さらなる付加価値をつくり出すのであります。
- (子どもは)手に入らないものは欲しがる。
- 不足はニュースになる。無料の宣伝。任天堂は広告費に売り上げの2%しか使わなかったというのは有名な話。
- 不足すると、人気のないソフトまで売れる。子どもはとにかく欲しがるものだ。
- 過剰供給に気をつけろ!もちろん過少供給にもリスクはあるが。
しかし、水はありふれたものだから安く、ダイヤモンドは希少だから高いのか。それだけではないだろう。では、付加価値とはなんだろうか?
日本的なやり方で付加価値を作り出す
個人間でも、企業と顧客間でも、良い関係を築くことが大切。競争市場で付加価値をつく出すのに良い方法もこれと同じ。どうすれば良いのか?
それは『返礼』である。
- 現金ではなく物で返礼したほうが効果的。
- 一番の返礼は一番の顧客に。大抵の企業は、一番良い待遇を新規の顧客に提供する。しかし、一番忠実な顧客を一番に扱うべき。恋する相手に花を贈るのと同じでなければならない。どこの企業も新規を大切にしてしまうと、顧客はより良いサービスを求めて次から次へと契約を移して行くだろう。
- 返礼をするつもりなら前もってその意思を伝えておくこと。
- 自分が独占者であっても返礼をすること忘れてはならない。
- 競争相手にも固定ファンがいることが大事。そうすれば価格競争を防げるだろう。
付加価値をいかに高めるか
競争がなければ付加価値が失われれることはない。そんでもって、他社の付加価値をいかに低めるかが戦略を考える上でのポイントとなる。
付加価値を維持するためには、顧客や供給者と強い取引関係を築いておかなければならない。例え戦略を『模倣』されても、信頼関係があれば生き残れる。
IBMが1981年にパソコン市場に参入した時、アップル社が大きなシェアをもっていたためにIBMはPCの開発を急ぐ必要があった。PCプログラミング「OS(オペレーティングシステム)」を自社開発をしないで『インテル社』と『マイクロソフト社』に任せ、IBMはソフトの開発に尽力した。するとハードウエアを模倣した他社が多数参入。IBMは付加価値は一気に減少した。
何が間違っていたのか?IBMは戦略的にOSを含めたハードウエアに集中すべきだった。少なくてもその時点では優位な立場で付加価値をもっていたからだ。他社の参入でハードを必要としなくなったインテル社とマイクロソフト社が付加価値をもってしまった。
次回に続く