「伝統」とは何か?を再考する本

日本の伝統とは

 日本に絞ってお話をするのなら、「日本古来の伝統」というのはよく聞く。というかむしろ、今の生活スタイルや慣習、社会のシステムまで全て「古来の伝統」でもって成り立っているというように感じるのは、MoominNだけではあるまい。

 そんな「伝統」について、「ちょっとまてよ」と一言いっているのがこの本↓

 

「日本の伝統」の正体

「日本の伝統」の正体

 

  実は比較的新しい時代に『発明』された「伝統」が、さも大昔から存在するかのように振舞っている例は多々あるのであります。

 

日本の「伝統」の定義

 「伝統」って何年続いていたら「伝統」なんだろうか?

 そもそも、現代の生活に密接した「伝統」は、生活様式自体が現代的になったところから始まったと思うのが自然。また、そうした生活に密接した内容というのは、経済活動にもつながっている場合がほとんど。

 ということは、一般ピープルが家をもって、モノが売り買いされる経済活動が一般的となった時代が、『今』の伝統の始まりではなかろうか?

 つまり、

 『江戸時代』(しかも中期以降)

 ということでしょうね。

 2018年から計算すると300年前が始まりということ。まあ、「伝統」といっていいでしょう?

 現代的な生活という感覚であれば、

 『明治維新』かと。現代から150年前。まあ、これもOKかな?

 

暦(六曜)についてモノ申す

 日本の暦に『六曜』というものがありますよね。

 先勝友引先負仏滅大安赤口

  です。Wikipediaによると

日本では、の中でも有名な暦注の一つで、一般のカレンダー手帳にも記載されていることが多い。今日の日本においても影響力があり、「結婚式は大安がよい」「葬式は友引を避ける」など、主に冠婚葬祭などの儀式と結びついて使用されている。

六輝(ろっき)や宿曜(すくよう)ともいうが、これは七曜との混同を避けるために、明治以後に作られた名称である。

ということで、中国から伝わったのは室町時代と言われているようです。この六曜について福沢諭吉が文句を言ったことから一時、正式に禁止したいきさつがあり、現代のように使われるようになったのは、昭和になってからみたい。

福沢諭吉曰く

これまでの暦には、つまらぬ吉凶を記し、迷いの種を多く増し、或いは婚礼の日限を延ばし、或いは転売の時を縮め、或いは旅立の日に後れて河止に逢うもあり。或いは暑中に葬礼の日を延ばして死人の腐敗するもあり

とけなしまくってます。

科学的根拠がないこともない(恐らく統計学に近い)のだろうが、それによる不都合や悪用も多いという点では、確かにその通りだろうと思うのであります。

 建設業では、こうした暦は今も重用されている。何かを決める目安としても利用しやすいので「活用」されているのだろうという感覚。

 でもこうした迷信を使って根拠もなく「商売」にしようとするのはどうかと思う。まあ、「信じる者は救われる」のであって「病は気から」ですし、「念ずれば通ず」でしょうから、全否定もいけないと思うのであります。

 ちょっと話がずれるかもしれないが、デパート発の商売でありながら、さも日本の伝統であるかのようなものもある。

  • 重箱のおせち
  • お中元・お歳暮

なんかは典型であろう。

最後に 作家・山本周五郎の名言をひとつ

他人の評や風説に惑わされるな。事を行うなら、自分で是非の判断をしたうえでやれ。禅門のつくった俗話は山ほどある。

それが法律だ思い込んでいたが、実は規則でも何でもなく、人々の怠慢から今まで質問してこなかった単なる習慣だったということが多くある。