ゲーム理論③「ジレンマ」

ゲーム理論は、『2つの論理的に正しい性質がケンカする』という社会の本質(ジレンマ)のことを言っています。

2つの『合理性(論理的に正しい性質)』

①個人が自分の目的を可能な限り追及するという「個人の合理性」

②社会が望ましい状態を実現をしようとする「社会の合理性」

 なので、このジレンマをいかに調和させるかというのがゲーム理論のテーマです。そして、そのためにはどうやって対立を解消して、お互いに協力的になれるかを解明する必要があるのであります。

この答えとして、2005年度ノーベル経済学賞受賞のRobert J.Aumann氏は、

「協力には協力、裏切りには裏切り」という相手と『同調』することで、対立が回避できるとしています。

 

ゲーム理論入門 (日経文庫―経済学入門シリーズ)

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ゲーム理論で勝つ経営 競争と協調のコーペティション戦略 日経ビジネス人文庫

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競争をつくり出せるという優位性

甘味料の競争

1980年代、コカ・コーラ社とペプシ社が採用する低カロリー甘味料「アスパーテム」をめぐる競争。市場を独占していた米「モンサント社」に、日本・オランダ合弁「HSC社」が挑んだ。

 

まずは、ヨーロッパ市場にて価格競争が起こり、HSC社が勝利する。

その後、アメリカ市場に出るが、コカ・コーラ社、ペプシ社共にモンサント社と契約する。価格競争になることなく(つまり競争すら起こらない)HSC社は参入の機会を失ったのです。

なぜだろう?キーワードは☟

  • 米飲料メーカーの望み→低価格の甘味料
  • モンサント社の強み・・・価格、ブランドイメージ
  • HSC社の強み・・・競争を始めるタイミングを選べる

この場合、HSC社は競争に出る順序を間違えていた。この競争の勝者を決めるのは米飲料メーカーだった。その競争で勝てばブランドイメージも逆転できた。ところが、HSC社は欧州で価格競争を先に行ってしまったことで、価格競争で先制攻撃をするチャンスを失した。

『競争をつくり出せる』という優位性を忘れてはいけない。

価格をどんどん引き下げれば競争に勝てるだろう。でもそれは本当の勝利ではない。価格競争を起こせるカギを自分がもっているのであれば、そのタイミングこそが自分にとっての唯一の優位性なのであります。

 

価格競争に隠されたコスト

①時間。様々な要素から価格を決める作業は膨大な時間を使っている。

②価格だけで契約した顧客は、誠実さのかけらもない。その顧客は低い価格のためなら誰とでも契約を結ぶだろう。そういう顧客を他者から奪い取れたということの事実を再確認すべきだ。

③競争に勝った相手からの報復(再度の価格競争)は、利益減を意味する。

④既存の顧客からの値下げ要求もあるものと思え。

⑤一度下げるとその価格が「標準価格」になる。「例外」や「特別」は通用しない。

⑥競争相手もその価格を「標準価格」にするだろう。

価格の引き下げは恐ろしく高価なものとなる

 

次回に続く