書籍好きにはたまらない古書ミステリー

本が好きな方って、物語や文章だけでなく、紙質や表紙のデザインなどの書籍そのものにも愛のある方もいらしゃいますよね。こだわりの方は初版本を収集されるでしょうし、もっと古く歴史的価値あるものを収集されている方も多い。ただ、どっぷり浸かっていないと者にとっては、興味はあってもその世界観がわかりにくい。そんなわけで、アメリカの古書について、またその取引事情について、ちょっとしることができるミステリー小説がこれ👇

 

死の蔵書 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

死の蔵書 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

 

 

物語はコロラド州デンバーで古書掘り出し屋が殺されることから始まる。その殺人事件の捜査を担当するのが主人公クリフ・ジョーンウェイ。被害者の蔵書に沢山の稀覯本があることに着目し、事件の真相を追う。

著者のジョンダニング自身が古書店をやっていたことからも、古書取引について詳しく書かれているし、1986年の時代設定で、古書の値段も表記される。

古書(稀覯本)になぜ高価な値段がつくのか、どこに魅力を感じるのか、その扱い方や装丁に関することまでまかれている。例え、その本を知らなくても、稀覯本が持つ特異性や魅力を充分にかんじることができる。書籍を扱う時にちょっと気持ちが入るようになるかも。

 

出版自体は1992年で2010年までに5部作を出している。ちょっとネタバレとなるが、主人公のクリフ・ジョーンウェイは、第1作目の死の蔵書をきっかけに警官から古書店主になり、その後も稀覯本が原因となるミステリーに巻き込まれていく。

 

 

災いの古書 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

災いの古書 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

 

 

 

幻の特装本 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

幻の特装本 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

 

 

失われし書庫 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

失われし書庫 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

 

 

 

愛書家の死 (ハヤカワ・ミステリ文庫 タ 2-10)

愛書家の死 (ハヤカワ・ミステリ文庫 タ 2-10)

 

 

多分、著者の物語構成の癖なんだろうが、主人公は警官の割には成り行き任せな男である。推理が鋭いというわけでもなく、どちらかというと直感にしたがって突き進む。それが、物語全体の構成を作っているので、あっちへいったり、こっちへいったりという展開が繰り広げられる。それが殺人事件と稀覯本取引という特殊な世界の中で行われることで、爽快感がある。読み手も特殊な世界観なだけに推理がしにくい。それがこの本のステキなところだと思うのであります。

 

早川書房の海外ミステリーは電子書籍化されているものが少ない

ジョンダニング作品も電子書籍されていない。読みたいと思った時に手軽に読みたいので、電子書籍化されていないのはちょっと残念だが、この本こそ紙をめくって読む楽しみがあるように思う。