若きビジネスマンの奮闘&葛藤をユーモアで表現した本

20代のビジネスマンは、仕事とプライベートの両輪が常に奮闘と葛藤が入り混じる生活だと思います。こうした生活にストレスを感じてくると、不器用な人ほど、あれこれ悩みが生じて、万事うまくいかないくなってくる。他者に相談するのが理想的だが、あれこれ考えてしまう脳をストップさせるためにも、映画や本を読む時間を増やして、何か自分の考え方を変えるヒントを探したほうが、手っ取り早く、時間を有意義に使えると思うのであります。

そんな悩み多き若きビジネスマンや就職を控える学生さんに是非読んでいただきたいと思う本が☟

 

神様からひと言 (光文社文庫)

神様からひと言 (光文社文庫)

 

 

「ビジネスマン」の24時間を感じる

本書の主人公は、広告代理店を退社し、中途採用で中堅食品メーカーに転職した27歳。

ストーリーは転職先の企画会議の場面からはじまる。

主人公は今どきの若者風で、とっても短気なロック好き。そんな性格が災いして、私生活でも会社でもちょっとうまくいってない。

前職のノウハウを活かせる「販売促進課」配属で転職した食品メーカーでも、トラブルを起こして転属。転属先は「お客様相談室」でクレーム対応をすることとなるが、そこで起こる様々な出来事や人とのかかわることで、大切な何かに気づく。

仕事や人の描写が丁寧なので、感情移入がしやすいし、「仕事とは」ということが1日の流れとして追える。出社→仕事→葛藤→帰宅→私生活という感じでストーリーが進んでいるので、「若きビジネスマンとは」ということが感じ取りやすい。

 

ユーモアとリアルの境界線

物語の冒頭の企画会議の一場面

新商品『TF01LL』のネーミングを決めるという大事な会議。主人公は販売促進課として提案するためのプレゼンをするはずだったが、大人の事情や重役の派閥争いが繰り広げられ自分の仕事ができない。登場人物ユーモラスで、言ってることやってることが滅茶苦茶なので、若い読者は『ユーモア&笑い話』で「こんな会社あるわけない」と思うかもしれいないが、

否‼」そんなことはない。

現実もこんなものだ。会議が会議になっていない、話がブレる、声の大きい人の意見が通る、平均年齢が上がれば上がるほど古い考えや体質に固執する。会議に限らず、『組織』としてあるところでは、こうした不毛な事が起こるものだと知っておいてほしいと思うのであります。

 

クレーム対応における出来事あれこれ

「お客様相談室」に限らず、接客、販売などの仕事をしていれば、クレームへの対応は大事なこと。ただ、主人公の会社で問題なのは、対応する者も商品を企画開発した者も会社や商品に自信や誇りがないということ。現実はここまで酷くないけれども、仕事を仕事と割り切ってしまうと大なり小なりこうなりがち。例えば、給料の為だけで営業をしているような人は、売ることが目的になって『相手の事を考える』ということを忘れるというのはありがち。

クレーム対応を全て真に受けていると病気になります(相手の言っていることが真実は限らないから)。本書の素敵なところは、この辺の精神的逃げ口をユーモラスに紹介しているところ。

冷静になるために、頭の中でドナドナの歌をリフレインした

by 主人公

みたいな。『激痛を忘れるために禅の境地へ』に近いぞ。参考になる(笑)

 

全450ページとちょっとボリュームのある文庫ですが、このユーモア溢れる内容であっという間に読み終えます。若きビジネスマン、就職を控えた学生さんは是非読んでみてほしいと思うのであります。